パラドックスの森

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アキレスと亀

俊足なアキレスがのろまな亀に追いつけない!?

これから、アキレスと亀はスタート地点Sからかけっこをやります。ただし、アキレスはカメより足が速いものとします。同じスタート地点では足の速いアキレスにとって有利なので、亀はアキレスよりいくらかゴールよりのC0からスタートします。アキレスがC0にたどり着いたとき、亀はその先のC1にたどり着きます。アキレスがC1にたどり着いたとき、亀はさらにその先のC2にたどり着きます。このようなことが永遠と続くので、俊足のアキレスはのろまな亀を追いかけても、追いつけないという現実との矛盾が起きます。

スタート前

         

アキレスがC0に到達する。すると、亀がC1に到達する。

アキレスがC1に到達する。すると、亀がC2に到達する。

何を前提とした議論か?

アキレスと亀について考えるにあたって重要なことは、何を前提としてアキレスは亀に追いつけないという結論が導き出されるのかです。その前提は主に3つあります。

一つ目は当然のことながら、アキレスは亀より速く走るということです。もし、アキレスが亀と同じかあるいは遅い速度で走ったら、アキレスは亀に追いつけません。だからと言って、一時的にアキレスが亀より速く走ればいいというわけではなく、常にアキレスはカメより速く走らなくてはなりません。なぜなら、万が一アキレスが途中で休憩したり、失速してしまえば、アキレスは亀に追いつけません。

二つ目は、アキレスと亀が同一直線上を同じ方向へ進むという条件を満たすことです。もし、アキレスと亀の進行方向が逆であったり、亀が北へ走っているのににも関わらずアキレスが東へ走ったりすれば、当然アキレスは亀に追いつくことができません。

三つ目は空間・時間を無限に分割できるものとすることです。実は、この前提がなければ、アキレスと亀のパラドックスは成り立たないのです。もし、これ以上分割できないとき、最小時間があるとすると、ある瞬間に突然アキレスが亀を追い越すことになるので、パラドックス自体成り立ちません。

以上のことをまとめると、アキレスと亀のパラドックスの前提は以下の通りです。

実際の数値例をつかってアキレスと亀を検証してみる。

アキレスと亀のパラドックスをもっとわかりやすくするために、先ほどの図にあるSとC0との距離を10mとし、アキレスと亀が走る速度は、それぞれ秒速10m、秒速5mで走るものとします。通常、亀が秒速5mで走るなどあり得ないのですが、この方が説明しやすいので、そうさせていただきます。

以下の図を見ていただくと分かるように、競走がスタートして1秒後にアキレスは地点C0にいき、亀は5m先のC1へ行きます。アキレスがC0からC1へ行くのにかかる時間は1/2秒で、その間に亀はさらに2.5m先のC2へ行きます。同様にアキレスがC1からC2へ行くのにかかる時間は1/4秒で、亀はその間に1.25m進みます。

スタート前

スタートして1秒後、アキレスはC0、亀はC1に到着

スタートして1+1/2秒後、アキレスはC1、亀はC2に到着

スタートして1+1/2+1/4秒後、アキレスはC2、亀はC3に到着

スタートして1+1/2+1/4+……+1/2n-2+1/2n-1秒後、アキレスはCn-1、亀はCnに到着

           

このようなことを繰り返すと、アキレスが亀がかつて通過した地点Cn-1に到着しても、亀はそれより少し先のCnに到着してしまうので、アキレスは亀に追いつけないわけです。

無限等比級数を使って考える。

そこで、アキレスと亀のパラドックスの前提を無視せずに、アキレスが亀に追いつくことを説明する方法があります。それが無限等比級数を使って説明する方法です。 アキレスが図のように亀を追いかけているとき、アキレスが各区間を通過するのにかかる時間は、下の表を使ってあらわしてみます。

            
区間アキレスが区間を通過するのにかかる時間
S----C0 1秒
C0----C1 1/2秒
C1----C2 1/4秒
C2----C3 1/8秒
……………………
Cn-1----Cn 1/2n
Cn----Cn+1 1/2n+1
……………………

アキレスが亀に追いつくのにかかる時間(T)は各区間を通過するのにかかる時間の合計であるので、

T=1+1/2+1/4+1/8+………+1/2n-1+1/2n+1/2n+1+………
=1/(1-1/2)=2(秒)

という風になり、無限等比級数が収束します。

無限等比級数の欠陥「私はすべての自然数を数え終えた」といえる矛盾

しかし、T=1+1/2+1/4+1/8+…=2と考えるのは理論上の話で、実はTが限りなく2に近づくということしか述べていません。なぜなら、どこまで足し算をづづければ2になるのか不明だからです。

ここで、アキレスは、亀がかつて通過した地点にたどり着くたびに、アキレスは自然数を1から順番に声に出すこととします。

図を用いて考えると、アキレスが亀を追いかけ始めて

このようにして数をカウントしていくと、アキレスが亀に追いついたとき、つまり、アキレスが亀を追いかけて2秒後に、アキレスは「私はすべての自然数を数え終えた。」と言うでしょう。でも、自然数は無限にあるのだから、こんなことはあり得ません。したがって、無限等比級数でアキレスと亀のパラドックスを処理しようとすれば、私たちは、アキレスが無限にある自然数を数え上げてしまう謎を解かなくてはなりません。

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