パラドックスの森

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サンクトペテルブルクの逆説

サンクトペテルブルクの逆説(パラドックス)とは?

あるコインを表が出るまで投げ続けてn回目に表が出た時に、賞金2n-1円もらえるゲームがあるとします。このとき、参加料をいくら高く設定しても、参加者の方が有利であるという矛盾が生じます。これがサンクトペテルブルクの逆説です。

サンクトペテルブルクの逆説における期待値の計算の仕方

あるギャンブルで参加料を払って参加するのが得であるのかどうかは、そのギャンブルで得られるであろう収益、つまり期待値を計算する必要があります。ここから先は、サンクトペテルブルクの逆説における期待値の計算の仕方を説明します。

サンクトペテルブルクの逆説では、n回目に表が出れば2n-1円もらえるゲームでした。

たとえば、

n回目で表がでる確率、つまり賞金2n-1(円)得られる確率は1/2nであるので、確率分布は次の通りになります。

                           
n 1 2 3 n-2 n-1 n n+1 n+2
賞金(X) 1 2 4 2n-3 2n-2 2n-1 2n 2n+1
確率(P) 1/2 1/4 1/8 1/2n-2 1/2n-1 1/2n 1/2n+1 1/2n+2

確率分布の表から、賞金の期待値E(X)は

E(X)=1×1/2+2×1/4+4×1/8+…………+2n-3×1/2n-2 +2n-2×1/2n-1 +2n-1×1/2n +…………
=1/2+1/2+1/2+…………
=無限大【∞】

以上の通り、表が出るまでコインを投げ続けてゲームをする場合、期待値が無限になります。したがって、いくら参加料を払ってもゲームに参加した方が得であるという理論が成り立ちます。

つぎにサンクトペテルブルクの逆説の解決法を先人たちがどのように考えてきたかを取り上げます。

先人たちが考えた解決法

期待値が無限になるという現実との実感の差を、先人たちはどう考えたのでしょうか?これから先人たちが提唱したサンクトペテルブルクの逆説の解決法を紹介します。

(1)コインが裏になる回数に上限を設ける方法

人間には体力的にも精神的にも限界があります。よって、コインが裏になる限り永遠とコインを投げ続ける前提で、期待値を求めようとするのは非現実的です。そこで、コインが裏になる回数の上限を定め、その上限が来たらギャンブルを終了することとします。

たとえば、10回連続で裏が出たら、ギャンブルを強制終了するとしたときの確率分布は以下の通りです。

      
n1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
賞金(X)20 21 22 23 24 25 26 27 28 29
確率(P) 1/21 1/22 1/23 1/24 1/25 1/26 1/27 1/28 1/29 1/210

賞金の期待値E(X)は

E(X)= 20×(1/2)1 +21×(1/2)2 +22×(1/2)3 +23×(1/2)4 +24×(1/2)5 +25×(1/2)6 +26×(1/2)7 +27×(1/2)8 +28×(1/2)9 +29×(1/2)10
=5(円)

よって期待値は有限の値になり、私たちの実感に近いものになりました。しかし、サンクトペテルブルクの逆説では、裏が出る限りコインを投げ続ける前提で議論が進んでいるので、コインが裏になる回数に上限を設けることは逃げの論法にすぎません。

(2)期待効用による方法

コインの裏が出る限りコインを永遠と投げ続ける前提では、賞金の期待値が無限になってしまいます。そこで考えだされたのが、効用を利用することによって問題を解決する方法です。効用とは人々の得る満足度のことで、経済学では需要曲線や供給曲線を導出する時に大変重要なものになります。これからやることは、賞金の期待値ではなく、効用の期待値を求める作業です。

ここで、賞金をXとするとき、その時に得られる効用をU=X1/2とします。なぜ効用がこのようになるかというと、効用が逓減することを表すためです。逓減とは増え具合が減ることです。減少するという意味ではないので混乱しないようにご注意ください。賞金と効用の図は以下の通りです。

賞金【横軸】と効用【縦軸】の図

確率分布を求めます。

n 1 2 3 n-1 n n+1
賞金(X) 20 21 22 2n-2 2n-1 2n
効用(U) (20)1/2 (21)1/2 (22)1/2 (2n-2)1/2 (2n-1)1/2 (2n)1/2
確率(P) 1/2 1/22 1/23 1/2n-1 1/2n 1/2n+1

期待効用E(U)は

E(U)= (20)1/2×1/2 +(21)1/2×1/22 +(22)1/2×1/23 +………… +(2n-2)1/2×1/2n-1 +(2n-1)1/2×1/2n +(2n)1/2×1/2n+1

ここで

(21/2)n-1×1/2n
=(21/2)n-1×{1/(21/2)}2n
=(21/2)n-1×(21/2)-2n
=(21/2)-(n+1)

より、

E(U)=1/{(21/2)2} +1/{(21/2)3} +1/{(21/2)4}+………… +1/{(21/2)n} +1/{(21/2)n+1 +1/{(21/2)n+2}} +…………

両辺にルート2をかけると、

A-@より、

よって期待値は有限の値になり、サンクトペテルブルクの逆説は解決したかに思われます。しかし、賞金の期待値を効用の期待値にすり替え、数学的な技で有限な値が出るように仕向けた感じがします。よって、この方法も完全な解決策にはならないと思います。

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